半狼ブライヴの物語

概要

 ブライヴは二本指に遣わされた影従。 その為ラニ達、特にイジーはブライヴを警戒していた。 しかし物語が進むにつれブライヴが真にラニの従者であったことが明らかになる。  


ブライヴが信用されていない描写

1,ダリウィルの捜索
 ブライヴは霧の森でダリウィルを探していた。ダリウィルの情報はイジーから聞かされたのものだろう。 しかしダリウィルは主なき猟犬の封牢に囚われている。その封牢はイジーが管理しており、後にブライヴ本人が捕らえられる場所だ。 褪せ人が封牢のことを知らせなければ、ブライヴはダリウィルの捜索に無為な時間を過ごす事になる。

 余談だが猟犬騎士は仕えた主を決して裏切らないという。 しかしブライヴはダリウィルを裏切り者と語った。「お前ほどの男が…」と言葉を濁す場面もある。 後にブライヴは封牢に捕まり「イジ爺に嵌められた」と言う。一連の出来事がイジーの謀であったであろう事がわかる。

2,ラニの従者紹介
 ラニと初遭遇のとき従者を紹介される。通常であればイジー、ブライヴ、セルブスの三人だが、特定の手順を踏むとブライヴが省かれる。 手順とはラニと会う前にラダーンを倒す事。これにより慟哭砂丘でブライヴが健在ながらも、ラニはブライヴを従者として紹介しない。 これはノクローンへの道、指殺しの刃を手に入れる算段が付いた時点でブライヴへ情報を与えないための処置と推測できる。 二本指から遣わされた影従であるブライヴは、いつ裏切るとも知れぬ存在なのだ。
参照動画(Twitter)

イジーの台詞

ラニ様が神人として、二本指の傀儡たるを拒んだとき  
影は狂い、ラニ様にとって恐ろしい呪いとなるのです  
それは運命。ブライヴの意思など、何の意味も持たないでしょう  

3,大いなる意思による干渉
 イジーはブライヴのみならず、自らの裏切りをすら恐れていた。 セルブスも例外ではない。 指殺しの刃を手に入れるとピディが殺害され、セルブスの遺骸が傀儡のような姿で発見される。

イジーの鏡兜 
    
イジーは恐怖していたのだ  
自らの裏切りを  

ブライヴが真にラニの従者となった瞬間

王家のグレートソード

カーリア王家の意匠が施されたグレートソード  
半狼のブライヴの得物   
  
生れ落ちた運命に背き  
ブライヴが、ラニだけに仕えると誓ったとき  
この剣は誓いの証となり、冷たい魔力を帯びた  
 
専用戦技「狼の襲撃」  
  
剣身に冷気を纏い、回転しながら前方に跳躍し  
その勢いのまま、大剣を地に突き立てる戦技    
それを引き抜く時、冷気の爆発を伴う  

 ブライヴが「ラニだけに仕えると誓った時」とは、ラニの魔術師塔で敵対する時である。 なぜなら冷たい魔力を帯びた「狼の襲撃」を使用するのは最終戦のみだからだ。
 影従は不死であり最終戦以外で敵対しても即時復活する。 不死の力を失うという事は大いなる意思からの解放を意味しており、ブライヴがラニの真の従者となった証と言える。

 赤目となったブライヴは"獣返り"をしている。 根拠は赤目の時だけ獣誘いの壺が有効である事。 通常状態では一切の誘い壺が効かない。
■参照動画(Twitter)
ver1.00でも同様の現象を確認

 他に人型で獣誘いの壺が効くのはファルム・アズラの獣人。 アズラの獣人は爪痕の聖印を持っており、聖印の爪痕はグラングの怒り。 そして祈祷「獣爪」もグラングの怒りであり、そこに”獣返り”のテキストがある。
獣人は贈られた知性を失い、獣へと返りつつあるのだろう。

 影従の不死性を失い贈られた知性も失って獣となった姿こそ、ラニの真の従者となったブライヴの姿だと言える。

獣誘いの壺

儀式壺を使った製作アイテムのひとつ  
暗部の祈祷が施されている  
  
FPを消費して投げつけ、赤い影を生じる  
  
影は、獣だけを引き寄せ、攻撃を誘う  
その効果は、戦闘状態であるか否かを問わない
爪痕の聖印

獣の司祭、グラングが授ける聖印  
筋力でも祈祷を補正する、珍しいもの  
  
その爪痕はグラングの怒りであり  
彼の授ける、獣の祈祷を強化する
獣爪

獣の司祭グラングが授ける祈祷  
  
獣爪を生じ、衝撃で大地を引き裂く  
タメ使用で強化される  
  
それは、獣返りしたグラングの  
怒りであり、焦燥であろう
チンクエディア

ファルム・アズラにおいて  
高位の司祭に与えられる短剣  
獣の祈祷の威力を高める  
  
かつて獣たちに贈られた知性  
その象徴たる、五指が象られている

ジーの懺悔

 イジーにブライヴの最後を告げるた時の台詞。 それはイジーがブライヴを信じ切れず、策略を企てていたという告白にも見える。

…呪いとなり狂ってなお、ラニ様のために尽くすとは  
軍師イジーともあろうものが、見誤っていたということか…  
…私ももうすぐ、そちらへ行く  
そこで詫びさせてくれ、ブライヴよ…  

ラニのブライヴに対する思い

 従者紹介でブライヴを省くラニだが、指殺しの刃を持って行った時にブライヴの名を口にする。 この時点でブライヴは封牢に閉じ込められており、先の様子からラニもそれを了解しているはずである。

 では何故、ブライヴの名を呟いたのか?
 その理由はラニが肉体を捨てた時まで遡る。 かつてラニが二本指を拒んだ時、イジーとブライヴはラニの味方であった。 監視役として遣わされた影従ブライヴは、二本指にとってみれば出来損ないだったとラニは述懐する。
 指殺しの刃を手に入れた時、ラニの反逆は確かなものとなった。 かつてのようにブライヴは変わらずラニに仕えてくれるのではないか。 ブライヴの名を口にしたのは、そんな未練からだったのかもしれない。


余談 ブライヴと災いの影

(追記:2023/11/19)
 ブライヴとまったく同じ姿をした災いの影だが、筆者は同一存在ではないと考えていた。
 理由を簡単に述べると、ラニの台詞でブライヴと災いの影を同一視しているように見えない事。 ブライヴの最後を知ったイジーの贖罪の言葉。黒狼の仮面にあるブライヴの姿を装った存在の示唆などが挙げられる。 これらを鑑みると、二本指にとって出来損ないのブライヴは災いの影に成り得ないと結論付けていた。
 しかし考察談義をする中で指摘を貰い、ブライヴ=災いの影であった時も物語が成り立つという知見を得る。 尚且つエルデンリング世界の霊体と肉体の不可解な描写に新たな視点が得られたので、余談として追記しようと思う。

・ブライヴ=災いの影
根拠の提示
・姿が同じ王家のグレートソードを所持している。
・フラグの関係で災いの影(霊体)を倒さなければブライヴ(肉体)を倒せない。
ラニの台詞の”災いの影=呪い”
・イジーの台詞”二本指の傀儡たるを拒んだ時、影は呪いとなる”
・イジーの台詞”呪いとなり狂ってなお、ラニ様のために尽くすとは…”

 以上の理由からブライヴは災いの影となってラニを襲ったと解釈できる。

 では最後に戦ったブライヴとは何だったのか?
 赤目のブライヴは「狂ってなお、ラニ様の為に尽くした」存在。 つまり肉体と霊体が別々な意思を持って行動していたのではないか。 そんな不可解な事が本当にあるだろうか?  エルデンリングの世界においては肉体と霊体は必ずしもイコールではないという事例が複数存在するのだ。

・肉体と霊体がチグハグな例
・円卓のヴァイクと狂い火のヴァイク
 円卓のヴァイクは封牢に閉じ込められているにもかかわらず、通常の肉体。 これは特殊な例で 通常封牢のボスは青みがかった姿をしている。 狂い火のヴァイクと違い雷を操り狂い火を使用しない。 どちらが本当のヴァイクなのか、ヴァイクの時系列はどういったものなのかなど議論に決着はついていない。

・糞喰い
 糞喰いはそもそも肉体と霊体の記憶を共有していない。 肉体が閉じ込められていても円卓に霊体が訪れたり、 円卓で会話をしていても肉体とは初対面であったりする。

・ミリセント
 エオニアの沼で侵入してくるミリセントは右手がある。 針によって意識を取り戻すと「悪夢を見ることもなくなった」と言う。 この描写は本人の意思と関係なく、霊体が独立して動いていたことを示す。

 以上の3つの事例から、肉体と霊体は必ずしも情報を共有せずに独立して動く事が示唆されている。 ならばイジーの言った「呪いと”なり”狂ってなお、ラニ様に尽くす」とは、 霊体は二本指の呪いとなり災いの影になってしまったが、肉体はラニに尽くしたという事ではないか。余談だが災いの影に獣誘いの壺は効かない。これは災いの影が知性を失ったブライヴではない事を示している。
 ブライヴは寒さに弱かった。ラニの真の従者となったのは肉体を持った狼ブライヴであったのだろう。


・余談の余談
 ブライヴ(肉体)=災いの影(霊体)
 円卓のヴァイク(肉体)=狂い火のヴァイク(霊体)
 この2つの共通点はどちらも 大いなる意思or外なる神 といった外部の強い力によって引き起こされたという事。 糞喰いもまた忌み子の魂を持って生まれた人間という意味では、その生まれから肉体と魂が引き裂かれている事がわかる。 ミケラ(肉体)とトリーナ(霊体)、マリカとラダゴンなども似たような関係なのかもしれない。
 肉体と霊体の関係については更なる考察が必要だろう。


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