カーリア王家と原輝石

概要

 カーリアは長い歴史を持つ王家であるにも関わらず、レナラとラニの2代しか継承されていない。 長命な種族であるのか、あるいは不老の要因が他にあるのか。 その謎について考えていく。

1.カーリア王家とは
2.原輝石
3.レナラが原輝石を有している根拠
4.ラニとセレンの類似性
5.ストーリー考察、ラニが自害した理由
6.レナラの指輪


1.カーリア王家とは

 カーリア王家の歴史とはレナラの歴史である。
 レナラの物語は星見の少女だった頃まで遡る。 星を追って旅した少女レナラは満月に出会い女王となった。 レナラは満月の力でレアルカリア学院を魅了し騎士を従えカーリアを王家とする。 レアルカリア学院の長となった後、黄金樹勢力との2度に渡る戦いを経て、赤髪のラダゴンと婚姻し和睦に至った。
 レナラはラダゴンとの間に3人の子供を設ける。ラダーン、ライカード、ラニである。 このうちのラニが次世代のカーリア王家女王となった。

 カーリアの王女に受け継がれるのは王家の鍵(指輪)と婚約の大剣の習わし。 歴代、王家、受け継がれる…といった言葉とは裏腹にカーリアは2代しか続いていない。 たった2代の伝統の中で、どうして長い歴史を感じさせる文言が使われるのか。 その謎を紐解いていきたい。

以下はカーリア王家に纏わるテキストの一部

星見少女の伝承  
星見の少女は、夜空を見上げ歩いた  
ずっとずっと、星を追って旅をした  
そして満月と出会い、女王となった  
レナラの満月  
女王レナラが、その幼き日に出会い  
後に学院を魅了した、美しい月である  
満月の女王の追憶  
若き日、レナラは卓越した英雄であった  
月の魔術で学院を魅了し、その長となり  
輝石の騎士たちを率い、カーリアを王家となしたのだ
捨てられた王家の鍵    
カーリアの王女に受け継がれる、宝箱を開くもの  
暗月の指輪  
暗い満月を象った大粒の指輪  
月の王女ラニが、その伴侶に贈るはずだった  
冷たい契りの指輪  
暗月の大剣  
歴代のカーリア女王たちが  
その伴侶に贈るという月の大剣  
「伝説の武器」のひとつ  
黄金律の大剣  
そこには、最初の妻レナラから贈られた  
大剣の面影があるという  

2.原輝石

 黄金律によって運命の死が封印された。 それによりデミゴッドは不死となる。しかし、レナラは黄金律に組み込まれる前から存在しており、かつデミゴッドではない。
 では何故レナラは老いることなく在り続けるのか?

結論:レナラの不死性の秘密は原輝石に依るものではないか

・原輝石
 原輝石とは魔術師の魂であり、新しい体に移植する事で甦ることができる。 原輝石の儀式に必要な「原輝石の刃」は星見の廃墟で見つかる。 全ての魔術師が原輝石を得るわけではなく、作中で見る事ができるのはセレンの原輝石のみだ。

・レナラが原輝石を有していた根拠とは?

1.「原輝石の刃」は山稜の星見の廃墟で見つかる
 星見のタリスマンはラニの死体から拾える。 そこには星を追って満月に出会った星見の少女の物語が描かれている。 よって、この星見の少女こそが満月と出会ったレナラであると言える。
 山稜にはグレートフードが落ちており、テキストに「幼きレナラが見上げた月」とある。 

2.ジェーレンがセレンの原輝石について言及している
 セレンはカーリアの禍根と言われ、カーリアはジェーレンにセレンを討つ依頼していたようだ。
 ジェーレンはラダーン将軍の麾下に参じる前は、カーリア王家の客人であった。 そのジェーレンがセレンの原輝石について知っているのは、おそらくカーリアから教えられたのだろう。 でなければ、どうしてただの戦士であるジェーレンが原輝石について知り得るだろうか。
 また、セレンの代替となる肉体はセルブスの地下室に保管されている。 カーリアが原輝石について知っていたのは自明である。

3.学院でのセレンの立ち振る舞い
 レアルカリア学院で、セレンはレナラの居た場所に立っている。 それは自分こそが学院の長であると主張するようだ。 セレンが原輝石の儀式に成功していて、レナラが原輝石を持っていないと言えるだろうか。

 以上の事からカーリア王家には原輝石との接点が多くあり、 レナラが原輝石を有している十分な根拠があると言えるのではないか。

疑問:代わりの肉体
 レナラの肉体の代替をどうやって確保するのか? ここからは完全な予想となり明確な根拠はない。

 カーリアは永遠の都と接点が多い。 星の雫、銀の幼生、傀儡、鏡兜、夜巫女と同じ姿の結びの教会の贖罪の像、夜巫女と同じ紋章がある椅子廟のミイラ… 傀儡の技術と写し身の技術によって仮初の肉体を調達するのに事欠かないのではないかと思える。

余談
 魔術「カーリアの返報」のアイコンはver1.07あたりまでサリアの椅子廟の紋章だった。 青い渦も暗く、返報の次の項目は夜の魔術群であったのだが… ver1.08でカーリアの紋章に差し替えられてしまった(サイレント修正)

以下 原輝石に関するテキスト

セレンの原輝石
原輝石とは、魔術師の魂である  
その古い体が死した後に  
相性の良い、新しい体に移植すれば  
魔術師は再び蘇る  
原輝石を、自らの魂とするために  
古い魔術師は、この刃で心臓を切り裂く  
そしてそのまま死んでいく
ジェーレンの台詞

…塊の魔女セレン、カーリアに仇なす者よ
今度こそ、原輝石諸共砕いてやろう
忘れるな。ジェーレンは、お前の死だ

4.ラニとセレンの類似性

 カーリアの女王レナラが原輝石を有しているならば…当代の女王ラニはどうか?
 ラニとセレンの物語はよく似ている。 互いに補完し合うように意図されたものだとすれば、ラニの原輝石の輪郭が見えてくるのではないだろうか。

ラニとセレンの物語の比較

ラダーンを倒すと星の封印が解かれ、二人の運命が動き出す
仮初の肉体 人形の身体=原輝石の器
刺客 災いの影=ジェーレン
刺客の武器 運命の死の炎を纏う剣=炎のように波打つ刃のフランベルジュ
返却した物 暗月の指輪=セレンの原輝石
儀式の剣 暗月の大剣=輝石のクリス
結末 暗月=魔術師球

結論
 暗月の指輪はラニにとっての原輝石ではないか?
 指輪が原輝石でなくとも、ラニが原輝石を得ていたのだとすれば、そこから見えてくるエルデンリングの物語がある。


5.ラニが自害した理由

 原輝石の儀式とは古い肉体を捨て魂を原輝石とするものである。
ラニがこの儀式を行う為には障害がある。 それは祝福によって不死性を与えられたデミゴッドの肉体。 不死の身体を殺し、魂だけを生かし原輝石としなければ儀式は完了しない。

 陰謀の夜にラニが行った儀式とは、肉体の呪縛から逃れ魂だけを抽出する…まさに原輝石の儀式なのだ。
つまりラニにとって重要なのは、魂を取り出す事である。 副産物に過ぎない死の呪痕が神授塔に捨て置かれていた理由がここにあると考えられる。

 なぜゴッドウィンが片割れに選ばれたのか? は、ここでは深く扱わない。
本来はゴッドウィン唯一人が最初の死者となり円環を為す死の呪痕を宿す予定だったのではないか。 それは運命の死を封印した黄金律に死の循環を取り戻す大切な儀式だったのかもしれない。

 しかし、ラニは陰謀の夜にゴッドウィンと同時に死ぬ事によって2人の最初の死者となった。 ゴッドウィンは魂が死に、ラニは肉体だけが死んで魂だけの存在となる。 輝石の魔術師にとって肉体は仮初に過ぎないのだ。

兄様、兄様、正しく死んで下さいな  
死の呪痕

月の王女ラニの、棄てた肉体に刻まれた呪痕  
百足傷の欠環とも呼ばれる  
  
呪痕は、デミゴッド最初の死に刻まれ  
円環を為すはずである  
  
だが、デミゴッド最初の死者は二人あり  
呪痕は2つの欠環となった  
  
ラニは、肉体だけの最初の死者であり  
故に死王子は、魂だけの最初の死者なのだ

6.レナラの指輪

 原輝石が暗月の指輪だったのなら…レナラの原輝石もまた指輪の形をしていたのかもしれない。
 ボスとして戦う全盛期のレナラの小指には指輪がある。 しかし泥濘の眠りのレナラにはない。ただし指輪の跡までが作り込まれている。
目の前にいるレナラが古い肉体であり"心"を失った存在であるならば、その心とは原輝石であり、また失った指輪なのかもしれない。

余談1
 心を失ったレナラを守るのは黄金樹の生命の象徴である琥珀のタマゴだ。 学徒たちは黄金の声色でレナラを守っている。 ラダゴンは自らの意思でレナラの心を壊したのか?  冷酷な側面と、一方で人間味溢れるラダゴン人間性は未だ掴めていない。 (追記:2023/11/24) レナラのバリア展開時の爆発は魔力属性である為、バリアは聖属性のものではないという事が判明している。

余談2
 原輝石を得た魔術師にとって肉体は仮初に過ぎない。 探求を認められた学徒たちは輝石頭を被る。 その中身が入れ替わっていることに誰が気付けるだろうか。
優秀な学徒とは、原輝石の器なのかもしれない。

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