陰謀の夜を読み解きたい

陰謀の夜

 陰謀の夜とはエルデンリングを砕くに至る原因となった事件。
 陰謀の夜の結果はゴッドウィンの死だが、そこに至るには複数の思惑があったと思われる。 つまり真の黒幕は存在せず各々の思惑が歪んだ末にゴッドウィンの死という結果になったと推察する。

各々の目論見
 マリカ  :神(エルデの獣)を殺す
 ラニ   :黄金律の支配から逃れ、冷たい夜の律を敷く
 ミケラ  :生死の循環を取り戻し、マレニアの宿痾を取り除く
 エルデの獣:黄金律の維持


陰謀の夜に起こった出来事

※クリックすると各事件の容疑者とその根拠が展開されます。

1.マリケスから運命の死が盗まれる
容疑者:マリカ、ラニ
根拠:「黒き剣の追憶」とラニの自供(2.で後述)

マリカは影従に、運命の死の封印たるを望み  
後にそれを裏切ったのだ  


2.黒き刃に運命の死を刻む儀式が行われる
容疑者:ラニ 協力者:ライカード
根拠:ラニの自白と黒き刃の刻印を調べたロジェールの台詞

私は魔女ラニ
死のルーンの一部を盗み、儀式により、それを神殺しの黒き刃となした
すべて私が、やったことだ
儀式の主、つまりは陰謀の夜の主犯も、見当がつきましたよ
月の王女ラニ…(以下略)


3.ゴッドウィンの殺害
実行犯:黒き刃の刺客
根拠:OPの映像と黒き刃の防具テキスト

陰謀の夜の実行犯たる刺客たちは
すべて女性であり、一説には
マリカに近しい稀人であったという


同3.ラニの自殺
目的:黄金律に縛られた肉体からの解放

…そして私は、二本指を拒んだ
死のルーンを盗み、神人たる自らの体を殺し、棄ててでも


4.その他のデミゴッドの殺害
 英語版ストーリートレーラーで殺害されたDEMIGODSと複数形で表記されている。 BANDAI NAMUCOの海外版には以下の記載がある。
 注目すべきは”マリカがデミゴッド達を守り切れなかった事”と”ゴッドウィンの殺害が永遠の女王にとって壊滅的な損失となった”という記述。

One grim night in the depths of winter, a flock of unknown assassins stole across the Lands Between.
In a coetaneous attack, this foul covenant snuffed out the lives of many of the God-Queen’s kin throughout the empire, too numerous and too scattered for her godly protection to save.

The assassins’ targets were multifold, but none was as devastating a loss to the Eternal Queen as that of Godwyn the Golden. After his death, the Elden Ring was somehow shattered, and the order of the world broke with it.


5.ゴッドウィン殺害実行犯、王都から逃亡
実行犯:アレクトー
根拠:ティシーのテキスト

陰謀の夜、黒き刃に死のルーンを宿し  
黄金のゴッドウィンを殺した暗殺者の一人  
ティシーは、黒き刃の長アレクトーの娘であり  
王都からの逃亡時、母を守り命を落としている


6.ゴッドウィンの埋葬と死に生きる者の誕生
ゴッドウィンが黄金樹の根の底に埋葬され、狭間の地で死の根が芽吹き、死に生きる者たちが生まれた。

陰謀の夜、盗まれた死のルーンは  
デミゴッド最初の死となった後  
地下の大樹根を通じて、狭間の各地に現れ  
死の根として芽吹いたのだ


7.エルデンリングの破壊
実行犯:マリカ
対抗:ラダゴン
根拠:マリカの槌

女王マリカが、エルデンリングを砕こうとし  
ラダゴンが、それを修復しようとした得物


陰謀の夜の考察

・何故マリカは運命の死を盗んだのか
 マリカはゴッドウィンの(魂だけの)死を望んでいない。
 ストーリートレーラーでは、ゴッドウィンが死んだ時マリカは狂ったのだろうと語られる。 これはマリカがゴッドウィンの死を望んでいなかった事を示す。 カプコンの英語記事「マリカはデミゴッド達を守り切れなかった」も後押しになるだろう。 マリカがゴッドウィン殺害を企てていないとする根拠は以上の2つである。

 では、何故マリカは運命の死を盗む必要があったのか。
 マリカの願いは神殺しである。 それはヒューグの祈りを聞けば明白。 褪せ人がエルデの獣を殺すに至ったのもマリカの思惑であると言える。 円卓は祝福に導かれた褪せ人たちの集いであり、褪せ人たちに奪った祝福の返還を約束したのはマリカである。 褪せ人たる主人公がエルデの獣を討伐する。 結果を見ればマリカが神(エルデの獣)を殺すという目的は一貫している。 円卓に描かれた黄金樹の紋章には無数の武器が突き立てられているのがその証左となるだろう。

 マリカが盗んだ運命の死はどこにあるのか。
 作中のテキストで触れられていない運命の死がひとつだけある。 それは磔にされたマリカを貫く赤い槍。 エルデの獣にはマリカの腹部に突き刺さった槍と同じ場所に傷があり、致命の一撃の起点となる。
 マリカの腹部に刺さった運命の死は、自らと共に神を砕く為に使われたのではないだろうか。

 エルデの獣は黄金律の具現である。 エルデの獣を殺すという事は黄金律を壊すという事であり、それは黄金律原理主義を掲げるラダゴンと真っ向から対立する。
 しかし腹を運命の死に貫かれてもエルデの獣を死なずにいる。 マリカ自身が行える最後の手段として、エルデンリングを砕く事によってエルデの獣を打倒しようとしたのではないか。 結果として律は壊れ、新たな王を待つ戦乱が狭間の地を覆うことになる。

 また、ラニも自供から運命の死を盗んだと言っている。 マリケスが二度盗まれるとは考えられない。 マリカが盗んだ運命の死の欠片をラニに譲渡したか、ラニがマリカから盗んだかである。 マリカが譲渡した場合はエルデの獣の打倒の先を見据えての事だったのかもしれない。 ラニがマリカから運命の死を盗んだのであれば、それはマリカの予期せぬ謀略があったことを示す。

・ゴッドウィン殺害を目論んだのは誰か
 マリカとラニがゴッドウィンを殺害する動機はない。 ラニに関して言えば同時に死ぬデミゴッドが誰であれ、ラニ自身の肉体のみを殺すという目的は達成できる。 では、誰がゴッドウィン殺害を目論んだのか。

 ゴッドウィンが”完全に死ぬ”とどうなるのか。
 死王子の修復ルーンには「新しい律は、死の回帰となるだろう」とある。 ゴッドウィンが完全な死を迎えていたのなら、黄金律は死の回帰を果たし新しい律へと至ったかもしれない。 では、死の回帰を望んだのは誰だったか。

 本編中で死の回帰を望んでいるのはフィア。 しかし、フィアに黒き刃を使役してゴッドウィンを殺害させることができるだろうか。 ましてマリカを欺いてとなると難しいだろう。

 誰がマリカを欺き、ゴッドウィン殺害を企て実行することができるのか。
 ミケラはゴッドウィンが正しい死を迎えるよう黄金の墓標で語っている。 ミケラは黄金律を見限り新たな律を目指した人物である。 ソール城の霊体の言う"友"がゴッドウィンであるなら、ミケラはゴッドウィンの再誕をこそ願っていたのだろう。
 ゴッドウィンの完全な死は再誕に至る為の準備であり、それは死の回帰となり新たな律を生む。 それを最も望む人物とはミケラではないだろうか。 死を取り除かれた黄金律は停滞を生み、淀みは朱い腐敗に至った。 ならば死を取り戻すことは生命の循環を取り戻す事であり、その流れは腐敗を抑制するのではないだろうか。

 ミケラとフィア達の接点とは
 これは「トリーナ=ミケラ」説を基礎としている。
 ファリスの製法書によればトリーナ(ミケラ)は眠りの中に居ると言う。
 フィアはプレイヤーを夢の世界へと連れて行ってくれる。
 アウレーザの英雄墓にはミケラの願いが刻まれた黄金の墓標があり、そこの敵はフィアの霧を使う忌み子とバジリスク。 英雄墓のボスである坩堝の騎士の紋章は死王子に掛けられた青い布と同じものである。 ミケラとフィアはゴッドウィンの再誕と夢を介することで繋がっているのだ。
 帳の恩寵を使った時、通常のものは白い紋章が浮かび上がる。 しかし光刺す帳の恩寵の紋章は赤み掛かっている。 それは運命の死を取り戻した色であると言える。

 ゴッドウィンの死を望む指読みの老婆
 根の底の指読みの老婆もまたゴッドウィンが死に殉じる事を望んでいる。 指読みの老婆は黄金律に属するはずだが、なぜ死の回帰を望むのか?  もうひとり、プレイヤーが運命の死を開放しようとした時、それを促す指読みもいる。
 指読みのエンヤは原初の大罪である黄金樹を焼こうとするプレイヤーの背中を押す。 その必要に迫られたのは「拒絶の棘」を焼くためだった。

 拒絶の棘が黄金樹を運命の死の開放を促した?
 この棘に浮かぶルーンの模様はラダゴン像の背景と同じ格子模様。 ラダゴンが運命の死の開放を望んだのだと言われると、そんなことがあるだろうか?
 黄金の律は運命の死が取り除かれる事で始まった。 黄金律原理主義のラダゴンが黄金律成立以前の赤い黄金樹を目指したのであれば、 指読みが運命の死の開放を促すことにも理由が与えられるが…果たして…?  これについては更なる研究が求められる。

結論
 ゴッドウィンの完全な死=再誕を願ったのはミケラ

予想される反論
 黒き刃はマリカと同じ稀人であり、マリカ直属の部隊ではないのか?
→黒き刃は聖樹の入り口であるオルディナを守っており、マリカと同族であればミケラとも同族である。 マリカ以外で黒き刃に使命を強いることのできる人物はミケラしか考えられないのではないか。

ラニの目的
 ラニの目的は冷たい夜の律を掲げる事である。
しかし神人である肉体は黄金律に縛られている。 二本指と大いなる意志の呪縛であり、尚且つ不死の身体。 その呪縛から逃れる為にラニは先ず神人の肉体を捨てる必要があった。
 2人のデミゴッドが同時に死ぬ事で、どちらの魂が死ぬかは賭けだったろう。 ここで魂だけを残すために原輝石の刃の儀式を必要としたのではないかと予想する。

 しかし、ラニの自殺はゴッドウィンの完全な死を望む勢力を裏切る行為。 故に陰謀の夜まで協力関係にあった黒き刃はラニ陣営を襲ったのだと思われる。
カーリアとミケラはローレッタをはじめ様々な要素で繋がっている。 だがレナラの言うように星の世紀ではラニは自分の夜を歩んだのだ。

 マリカはラニの目論見を知っていた可能性がある。 でなければ運命の死の欠片を分け与える事そのものが奇妙だからだ。 では、何故ゴッドウィンが半死したことに狂ったのか?  ゴッドウィンの殺害はマリカの予定には無く、ミケラの独断だったのではないか?  そう考えればラニよってマリカもミケラも計画を狂わされたという事になる。 すべてを裏切るとはそういう事だったのではないか。

 なお、協力者ライカードについてだが、彼は黒き刃に運命の死を刻む儀式を手伝ったのだと推測される。 または原輝石の刃の儀式。 黒き刃の刻印がある部屋には火山館にある絨毯が敷かれている。 ライカード自身も古く失われた呪術を魔術として復興するなど儀式に造詣が深い。 余談になるが、賢者の洞窟では古い死の魔術を蘇らせた死術師ガレスがおり、その洞窟には黒き刃も居る。 やがて冒涜を犯す事を目論んでいたライカードだったが、冷たい夜の律ははるか彼方にあり生命と律は途方もなく離れてしまった。 これもある意味でラニの裏切りであったのかもしれない。


補足 (2023/11/17 追記)

 ミケラとフィアが同じくゴッドウィンの殺害を目論んだように書いているが、そうではない。 ミケラはゴッドウィンの完全な死を願い。 フィアはゴッドウィンが半死した為に生まれたミケラとは相いれない勢力である。 ミケラの望む新たな律とフィアの望む律とは別物と考える。